(まど)

 

とんがり屋根(やね)の建物(たてもの)からいろいろな人たちがこちらを見ています。古賀春江がえがいた「窓」(まど)という絵です。古賀春江はこの絵について「たくさんな窓のあるいえ、一つ一つの窓から顔(かお)がでている。顔には地図(ちず)がえがいてある。」とはじまる詩を書きました。

※もとの詩の漢字を平仮名にし、古い文字を今の文字に改めています。もとの詩は「!!(もっと)」で読めます。

作者 古賀 春江(こが はるえ) 作者について
素材・技法 画布(がふ)に油絵具(あぶらえのぐ)
制作時期 1927年
サイズ たて 90.5cm × よこ 72.7cm
窓から見えるものを描いてみよう

おおらかな線で描かれた花や人や椅子や建物。暗いような明るいような不思議な色彩で描かれていますが、こちらに視線をなげかける人物たちや部屋のなかの様子は軽やかでチャーミングです。しかし四角のなかに描かれたものの遠近感や視点(どこから見ているか)はちぐはぐです。古賀春江はわずか38歳で亡くなりましたが、短い期間にさまざまな画風の絵を描きましたが、《窓》を描いた時期の絵は「子どもの絵のよう」と言われることもあります。古賀春江自身は「でたらめ」と呼んでいます。数年前から春江は「でたらめの画」を描きたいと試行錯誤していました。それらが実を結ぶのがこの頃です。

※出鱈目(でたらめ)・・・筋の通らない言動。でまかせ。また、物事や言動が首尾一貫せずいいかげんであるさま。(『広辞苑 第4版』)

窓     古賀春江・作
沢山な窓のある家、
一つ一つの窓から顔が出てゐる。
顔には地図が描いてある。
みんなの地図が読める、
鳥籠も描いてある、花もあり、コップも、望遠鏡も、並ぶ顔、水筒、
霧、黎明とパイプも確実につながつてお互の陰翳を持つてゐる。
痙攣する避雷針の窓からまた一つの顔を見ないか、
揺れる、揺れる、椅子が、星が、
黒い夜の絵具は沈黙して語らない――その後の顔等に就いては。
今はただ明るく揺れる顔がある。

古賀春江は自分の画集のなかで、この絵に添えて「窓」という題の詩を発表しています。1931年、絵を描いた4年後のことです。詩のなかにでてくるものと絵のなかにでてくるものは、必ずしも同じではなく、少しちぐはぐです。彼の多くの詩は絵と少し異なっています。そのため私たちは言葉と絵を行ったり来たりすることになります。ぴったり一致しないからこそ、春江が言葉と絵の間に生み出した世界は、さらに不思議なものとなっていきます。

くらべてみよう!
たくさんの窓のある家が描かれています。
ひとつひとつの窓から部屋の様子が見えます。
あなたが過ごしたことのある部屋とくらべてみましょう!
気になるお部屋はどんな部屋ですか。

古賀春江の描いた家は何階建てですか。
窓はいくつありましたか。

朗読してみよう!
古賀春江の書いた詩「窓」を朗読してみましょう。
(古賀春江の詩は「!!(もっと)」で読むことが出来ます)

さがしてみよう!
詩のなかに出てくるものをいくつか紹介します。それらは描かれていますか。
◽花  ◽鳥かご  ◽パイプ  ◽星 ◽椅子
◽水筒  ◽コップ ◽望遠鏡

つくってみよう!
あなたも古賀春江のように絵を見て詩を書いてみましょう。