風景
(ふうけい)

 

地面(じめん)におかれたオレンジと黄色と緑のボールにドラム缶。空には気球(ききゅう)が浮いています。遠くにある細長いものや尖った形のもの、壁のような平べったいものはなんだか正体(しょうたい)が良く分かりません。どこか不思議(ふしぎ)な風景(ふうけい)。伊藤研之がえがきました。伊藤は心のなかに思いうかぶ風景(「心象風景(しんしょうふうけい)」といいます)を得意(とくい)としました。

作者 伊藤研之(いとう けんし)
素材・技法 画布(がふ)に油絵具(あぶらえのぐ)
制作時期 1976年
サイズ たて 95.5cm × よこ 129.0cm

どこまでも広がる大地と空にボール、ドラム缶、気球、そして正体が分からない物体がいくつかあります。左手前の地面には影らしきものも描かれていますが、何の影なのかは分かりません。不思議で謎めいた世界です。

不思議ですが、どこか理知的(物事を筋道(すじみち)をたてて論理的に考え判断できるようす)な雰囲気もあります。
そう見える理由は、明るい色あいや、あるいは直方体や円錐形(えんすいけい)など幾何学的(きかがくてき)な立体が描かれていることにもあるでしょう。また、画面全体が「遠近法」(えんきんほう)のルールで統一されていることもあります。遠近法とは、3次元の空間のなかに存在する「遠い・近い」などの関係を、2次元である絵画のなかで表現する方法です。《風景》では、近いものを大きく、遠いものを小さく描き、とても遠くのものはどんどん小さくなって地平線上で消えてしまう「線遠近法」が使われています。

《風景》に描かれる謎めいた世界。ボール、ドラム缶、気球などはそれが何かは分かりますが、その組み合わせはどこか奇妙(きみょう)です。砂浜で遊ぶときに使うビーチボールのような球体、工場や倉庫などで見るようなドラム缶、そして空に浮(う)かぶ気球のそれぞれが本来あるであろう場面はバラバラで、全く異なる場所からひょいと寄せ集めたような不思議な印象があります。

伊藤研之はシュルレアリスムという芸術運動の影響(えいきょう)をうけて、幻想的な作品をいくつも描きました。シュルレアリスムの画家や文学者たちが使った表現方法に「デペイズマン」というものがあります。「デペイズマン」とは、本来あるべき環境(かんきょう)や文脈から離(はな)して別の環境や文脈へ置くことを意味します。普通に考えるとありえないような場所に置いたり、ありえないような組合せをしたりすることで違和感(いわかん)や不思議な感じを生み出します。伊藤研之の絵の不思議な印象の理由のひとつも、この環境や文脈が変えられたりずらされたりすることによるチグハグさにあります。

気球が浮かんでいます。どこへ行くのでしょうか。
ここはどんなところだと思いますか?

季節:春・夏・秋・冬

天気:はれ・くもり・雨

気温:暑い・あたたかい・さむい

時間:朝・昼・夜

 

なぜそう思いましたか?

カードと4つの形をダウンロードして、「風景」を組み立ててみましょう!

サムネイルサムネイル

 

用意するもの
・ハサミ
・セロテープ
・のり