宙
(ちゅう)
大きな黒い四角形と赤い四角形、そして真ん中には小さな黒の四角形。四角形をよく見ると少しデコボコしていて、赤い四角形には細い切れ目のような線が入っています。この絵をえがいたのは山口長男(やまぐちたけお)。山口長男はある時期から、黒か黒紺(プルシャンブル―)に黄土色か赤茶色というかぎられた色だけをつかって強い存在感(そんざいかん)のある絵をえがきました。
作者 | 山口 長男(やまぐち たけお) |
素材・技法 | 板に油絵具(あぶらえのぐ) |
制作時期 | 1965年 |
サイズ | たて 181.8cm × よこ 182.0cm |
1940年代なかばから、山口長男は黒や黒紺の地にシンプルな形を描くようになります。
黄土色や赤茶色で濃淡(のうたん)をあまりつけずに描かれた形は図形のようですが、絵の中では、背景とも言える「地」と形の部分の「図」が強く関わり合っているように見えます。
山口長男はこのようなスタイルの絵をたくさん描きましたが、形はだんだんと整えられて記号のような形となり、垂直と水平の太い直線の組合せや直線と円の組み合わせとなり、さらに四角い形を組合せたより広い色の面へと変化していきます。
そして、図はどんどん大きくなり、《宙》では地と図がほぼ同じ大きさにまでなりました。《宙》の赤茶色の図は、地との関係を飛び越え、私たちの目の前に迫ってきます。塗り重ねられて厚くなった絵の具の質感からは、物質としての絵画の存在感を強く感じることができます。板の上にペインティングナイフと呼ばれる道具で描いていく山口長男の描き方、そして絵の色や形、全てがあわさって絵の静かな迫力を生み出しています。
限られた色の絵具しか使わなかった山口長男ですが、「色いろの告白」という文章の中で、「ものの本来」は無色であると述べています。そして、色彩とは「人ともの」の間に生じるもので、「もの」は無限の色を含んでいるのであり、「私の色彩がいろいろの面を包含(ほうがん)して無数の充実(じゅうじつ)をもちたいものである」と言います。《宙》の中からも無限に色を感じとることはできますか?黒と赤茶色の中に潜(ひそ)んでいるいろいろな色を想像してみましょう。
黒と赤茶色の2つの色で作られた、ほぼ正方形の世界。
作品にあう言葉をえらんでみましょう!
つるつる カリカリ
ベタベタ ガチガチ キラキラ
ふわふわ ほか( )