山々の装ひ
(やまやま の よそおい)

うねうねとした木のみきに、いろいろな形の葉っぱ。赤、青、黄色に白に、紫と色とりどりの花。さまざまなものが金色のうえにえがかれています。えがいたのは水上泰生(みずかみたいせい)。泰生はスケッチがとくいで、植物(しょくぶつ)や動物(どうぶつ)をいろいろな場所(ばしょ)でえがいて、自分の絵のなかに登場(とうじょう)させました。見たことがあるものはありますか?

作者 水上 泰生(みずかみ たいせい) 作者について
素材・技法 絹(きぬ)に金ぱく・岩絵具(いわえのぐ)・墨(すみ)・金でい 【絹本金地着色】
制作時期 1917年
サイズ それぞれ たて 168.3cm × よこ 373.2cm

鳥や花が描かれた絵を東アジアでは「花鳥画」(かちょうが)と呼ぶことがあります。水上泰生はこの「花鳥画」が得意でした。「花鳥画」のなかで古くからよく描かれた桜や梅、タカやキジなど以外にも、泰生はさまざまな鳥や花を描きました。それはとても身近なものもあれば遠くの土地の少し珍しいものもありました。里山や高山の生き物など、今まで描かれなかったような植物や動物も描いています。好奇心旺盛な泰生は樺太(からふと)や琉球(りゅうきゅう)にも旅したそうです。ここで描かれているのは、「クズ」「アケビ」「シャクナゲ」「ボタン」「キキョウ」「イタドリ」「ガクアジサイ」「ホタルブクロ」などです。

水上泰生はそれぞれの鳥や植物の特徴を巧みに描いているので、実際にどんな種類の鳥なのか、植物なのかが図鑑で探してみると分かるほどです。その様子は「学者のようだ」とも言われました。同時に金色の背景やにじんだ墨で表わされた葉っぱなど、現実とはずいぶんと異なる描き方もされています。金色の背景は「箔(はく)」と呼ばれる紙のように薄い金属を貼って作られています。箔による表現も墨による表現も日本の伝統的な技法です。
泰生が様々な表現や技法をどのように使い分けているか観察してみましょう。

さがしてみよう!
夏のはじめに見られるものがたくさん描かれています。
ここはどんな場所ですか。

この絵を見て、どんな感じがしますか。
おだやか あたたかい よわよわしい ぎゅうぎゅう つめたい さむい ちからづよい すっきり しずか その他

「たらし込み」に挑戦!
描き方に注目してみましょう。葉っぱの色がにじんだような濃淡(濃い色や、あわい色)で描かれています。これは「たらし込み」と言われる方法です。

最初にぬった色がまだ乾かないうちに他の色をぬります。最初にぬった色とまざる、にじみの効果をいかすというものです。もう一度1枚1枚の葉をよく見てみましょう。濃い緑や薄い緑、黄色など色々な色がまざっています。
葉っぱを拾ってきて、「たらし込み」で描いてみましょう。