果樹島園
(かじゅとうえん)

海にかこまれた島の生活が、明るい色の“てんてん”でえがかれています。はたらく人たちの横で犬が昼寝(ひるね)をしていたり、のどかな風景(ふうけい)です。えがいたのは柳瀬正夢(やなせまさむ)。18さいごろの作品です。柳瀬が生まれ育った瀬戸内海(せとないかい)近くのあたたかな気候(きこう)の土地のようすなのかもしれません。

作者 柳瀬 正夢(やなせ まさむ) 作者について
素材・技法 画布(がふ)に油絵具(あぶらえのぐ)
制作時期 1918年
サイズ たて 83.0cm × よこ 136.0cm
点の世界へようこそ

いくつもの点で絵を描く方法は「点描」(てんびょう)と呼ばれています。人々は大昔からさまざまな点描で色々なものを表現してきました。特に有名なものは、1880年代から1900年頃に「新印象派」とよばれる人たちが取りくんでいた点描でしょう。新印象派の画家たちは明るい光や色彩を効果的に表現するために点描をもちいていました。柳瀬正夢はそのことを知っていたのでしょう。点描で「河と降る光と」というタイトルの絵をえがいて、大きな展覧会に入選しています。彼が15歳のころのことです。柳瀬の故郷の瀬戸内海付近の気候は晴れの日が多いことが特徴ですが、《果樹島園》ではきらめく太陽の恵みをゆたかに受ける土地の様子を点描で表現しています。

《果樹島園》は二つ折りの小さめの屏風(びょうぶ)です。屏風とは東アジアに古くからある、風をよけたり、目隠しにしたりする室内用の家具で、色々な絵を描いて室内の装飾(そうしょく)の一部としても用いられました。絵を描くときは、東アジアの伝統的な画材である墨(すみ)や岩絵具などが使われていることが多いのですが、《果樹島園》では油絵具を使われています。油絵具はヨーロッパから入ってきた画材で、画布(カンバス)と呼ばれる木枠(きわく)にはった布に描かれることが多いので、この絵は少し変わったことが試みられているといえます。柳瀬正夢は45年の短い一生のなかで、さまざまな画材や技法を使い、さまざまな領域を横断して活躍しました。油絵具でえがかれた一風変わった点描の屏風には、古い枠組みにとらわれずに新しいことに挑戦しつづけた柳瀬の姿勢がうかがえます。

さがしてみましょう!
畑や木、海、みんな”てんてん”で描かれています。
どんな”てんてん”がありますか?さがしてみましょう!

四角いてんてん  まんまるのてんてん  大きなてんてん  小さなてんてん
横向きのてんてん  縦向きのてんてん  斜めのてんてん  重なるてんてん
ほかにどんな”てんてん”をみつけましたか?

絵が完成した時、名前(サイン)を残します。
この絵のサインは、左下にあります。
はなびらのようなかたちの中に「正夢」とかかれています。
あなたも自分のサインを考えてみましょう!